今回は日本脳炎についてです。
日本脳炎ウイルスは通常ブタに感染し、感染したブタの血を吸った蚊(コガタアカイエカ)が、ヒトを刺すことによって伝播されます。
日本脳炎ウイルスに感染しても
重篤な脳炎や髄膜炎を発症する確率は、100~1000人に一人程度と言われています。しかし、
一旦脳炎を発症すると、致死率は20-40%程度と高いのが問題です。
現在、
日本脳炎の発症数は日本全体で年に数例程度とのことですが、これは今までワクチン接種などを行ってきた結果、発症が抑制されているものと思われます。
日本感染症研究所発表の日本脳炎報告者数
日本脳炎の発症者は西日本で多い傾向がありますが、静岡県、愛知県、岐阜県など中部地方でも2000年~2011年7月までに7名の発症者が報告されています。
日本脳炎ワクチンは、2005年にワクチン接種後に
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)という病気が発症する可能性があるということで、積極的接種を控える事態となりました。その後、ワクチンの改善により接種後のADEM発症が減り、無事接種が再開されるようになったのですが、
接種を控えていた世代(3歳~7歳くらい)の日本脳炎ウイルスに対する抗体保有率が著しく下がってしまったことが問題とされています。
蚊の移動範囲は通常2km程度と言われていますので、2km圏内にブタを飼ったりしているところがなければ、感染する危険は少ないのかもしれません。しかし、近年はアウトドア志向で、野外キャンプや山登りなどに行かれる機会も増えており、決して安心はできません。
ブタが日本脳炎ウイルスに感染するのは、6-7月頃で、九州など西日本で感染が始まり、徐々に東に向かって感染が拡大することが判っています。静岡県は8月頃にはブタの感染率が50%以上になっているようです。
静岡県は2000年~2009年までの間に経年でブタの日本脳炎ウイルス感染率が80%以上になることが多く、これは中部地方では断トツに高い数値です。これは静岡県は日本脳炎に罹りやすい地域ということになるのかもしれません。
夏は過ぎてしまいましたが、
日本脳炎ワクチンを一度も接種していないお子さんは、夏前に最初2回のワクチン接種を終えておかれるとよいと言われています。
少々長くなりましたが、このような背景もあって、2011年5月の法令改正により、
平成7年6月1日~平成19年4月1日までの間に生まれたお子さんについては、20歳になるまでの間、未接種分の日本脳炎の予防接種を公費で受けられることとなりました。
接種時期については、今までに受けた接種回数や年齢などによって変わってきますが、これが複雑でなかなか理解に苦しみます。
そこで、簡単に原則を覚えてください。
・日本脳炎ワクチンは全部で4回接種
・4回目は9歳を過ぎてから
・接種と接種の間隔は最低でも6日以上あける
・まだ接種していないお子さんはできるだけ早く1回目をやる
あとは母子手帳をみて、日本脳炎のワクチン接種を今まで何回やっているかを確認して、医療機関に問い合わせれば大丈夫でしょう。
日本脳炎ワクチンは生後6カ月以降に接種できるようになるため、現在は第一期の3回接種は小児科で乳幼児の時期に行われていると思われます。
接種を見合わせていた時期に接種しないで小学生・中学生になっているような方であれば、当院で接種をお受けいたします。就学前のお子さんについては、小児科専門医での接種をお勧めします。
詳しくはお電話等でお気軽にスタッフまでお問い合わせください。
幸田クリニック