本末転倒?

こうだ

2014年08月18日 21:42

当院も8月のお盆休みを頂き、スタッフ一同、リフレッシュして診療が再開しました。

休診明け早々、胃がん検診の在り方を考えさせられるような 患者さんからの訴えがあったので、ご紹介します。

その患者さんは、2か月くらい前から胃の痛みが続き、食欲がないということで本日来院されました。

会社勤めをされているということで、
「健康診断で胃がん検診を受けましたか?」
とお尋ねすると..

「7月に健診があって、その際にも胃が痛かったので、胃のX線検査の前に胃が痛いことを申し出ました。そうしたら...」

「胃が痛い人はバリウム検査をしないほうがよいので止めておきましょう」

と言われて、 
検査をしてもらえなかった というのです。

私は ?????    と絶句してしまいました。

確かに、バリウムは便秘の原因になったりして、胃腸の負担になるかもしれません。しかも、検診は基本的には症状のない人が受けることが前提にはなっています。症状がある人に検査をして、余計に悪化したら困る..と担当者は思ったのでしょう。

でも、患者さん本人は、胃が痛いけれども病院に行く時間もないので、検診してもらえれるならそこで診てもらおう 
と思って検診を受けようとしたに違いありません。

こんなことがあっていいのでしょうか。

まず第一に、胃のバリウム検査は正真正銘の胃の検査ですよ!

胃の痛い人にやれない検査なんて、胃の検査としての意味があるんですか?

今から、40年くらい前、胃カメラ検査が一般的ではなかった時代には、胃の痛い人はバリウムの検査を受けていたんですよ!

こんなことだから、胃X線検査はどんどん廃れてしまうのか..と、ずっと胃のX線検査を学んできた私は、大変悲しい思いとともに憤りを感じました。
いつから、症状のある人は胃カメラ検査で、症状のない人はバリウム検査という決まりになったのでしょう。
そんなことは誰も言っていないはずです。

胃がん検診において、胃X線検査は今後もなくてはならない検査だと思いますし、厚労省もそのがん検診の効果は認めています。
検診の現場に症状のある人が来たら、ない人を検診するより病気が見つかる確率は高いはずなんです。
それを検査しないなんて、医療従事者の倫理として言語道断ですし、その理由も本末転倒です。

長いこと胃がん死亡者数の減少に寄与してきた胃X線検診ですが、従事者がこんな状況では本当に先行き不安だらけです。

きっと、その従事者はこういうのでしょう。
「医者が検診に帯同してくれれば検査できますよ!」と。

何でもかんでも医者に責任を被せれば済む話ではないと思います。
ただでさえ、病院では人手が足りないのに、バリウムの検診に医師の帯同が必要なんてことになれば、それはそれは病院にとっては大損失です。
何故なら、その医師が、その間、病院で内視鏡検査をしてくれていたほうが、何倍か癌を見つける可能性は高いのですから。

バリウムの検査に医師が帯同することが義務付けらるようになったら、そのときこそ、胃X線検査の終焉の時なのかもしれません。

 幸田クリニック



関連記事