2008年10月26日

鳥肌胃炎についての私見

 ここ数年間ですが、クリニックの掲示板に鳥肌胃炎の問い合わせが相次いでおります。鳥肌胃炎という言葉が一部の患者様たちの間で独り歩きし、鳥肌胃炎=胃がん予備軍・がんの前病変であるかのような捉え方が横行しています。恐らく、説明をしている医師側もさほど情報がない中で、胃がんの発生の危険が高いという説明をしているために、鳥肌胃炎=胃がん宣告間近という短絡的経路が出来上がってしまい、その誤解から過剰なまでの不安に襲われている方が多くいらっしゃるのだと思います。そのような患者様のために掲示板で回答を繰り返してきましたが、この際、ブログの中で私的意見という形で、消化器内視鏡医としての経験を踏まえて掲示したいと思います。少々長文になりますことを予めお詫びいたします。

 まず、鳥肌胃炎というものですが、これがピロリ菌感染と関係があることは、今のところ疑いようのない事実と思われます。問題は、ピロリ菌に感染していても鳥肌胃炎になる人とならない人がいるということです。私の経験では、小児期(10歳を超えた程度)に度重なる胃の痛みのため内視鏡を行ったピロリ菌感染者では、その殆どに鳥肌胃炎を観察できます。ピロリ菌に感染するのは乳幼児期と言われていますので、赤ん坊のときにピロリ菌に感染した方は学童期くらいになると、一旦は鳥肌胃炎を発生しているのではないかと思っています。しかし、その後大人になるにつれピロリ菌感染が陽性でも必ずしも鳥肌胃炎になる方は少なくなります。鳥肌胃炎が何らかの原因で治まってしまうものと考えられます。成人になった段階で、鳥肌胃炎が残存している方は女性に多く、なぜ女性多いのかはわかっていません。当院で経験する鳥肌胃炎のほとんども若年女性患者です。私自身の経験では小児期には男女差はない印象があります。一方、60歳や70歳の鳥肌胃炎というのもほとんど経験がありません。これら男女差の原因はホルモン説などがいわれていますが真実は未だ闇の中です。

 次の問題として、鳥肌胃炎→胃がん発生の段階が果たして本当なのか、ということが挙げられます。これについては川崎医科大学の春間教授らのグループが中心となった研究が最も有名です。もともと、ピロリ菌感染は胃がん発生の関連因子であることは証明されていますので、そこは正しいと仮定すると、鳥肌胃炎が胃がんの危険因子かどうかをみるためには、ピロリ菌に感染して鳥肌胃炎になっている人と鳥肌胃炎になっていない人の間で胃がんの発症率に差があるのかどうかを調べる必要があるものと思われます。今のところ、世間一般に出ているデータは、鳥肌胃炎の患者と非鳥肌胃炎の患者(ピロリ菌感染があるとは限らない)患者間を比べると鳥肌胃炎の患者の方が圧倒的に胃がんの危険性が高いということになっています。これが鳥肌胃炎の患者様が胃がんになりやすいというデータの根拠なのだろうと思います。しかし、片や100%ピロリ菌感染者で、片やピロリ菌感染があるとは限らない人達で比べて差が出るのは当然であり、全く否定するという訳ではありませんが、現状で鳥肌胃炎が胃がんの高度危険因子であるとするのはかなり無理があるのではないでしょうか。今後、追試をしなくてはいけない点であるものと思います。

 次に鳥肌胃炎に発生する胃がんについてです。鳥肌胃炎が胃がん発生の原因となると思われている患者様の多くは、鳥肌胃炎の領域内にがんが出来てくると思われている方が多いのではないでしょうか。鳥肌胃炎が胃がんになりやすいといわれればそのように理解するのが当然のことと思います。しかし、現実は違うのです。鳥肌胃炎というのは基本的に、胃の出口付近(前庭部という部分)を中心として発生し拡がります。しかし、鳥肌胃炎に合併する胃がんはというと、胃の真ん中部分(胃体部という部分)に発生し鳥肌胃炎を必ずしも背景にしている訳ではありません。つまり、鳥肌胃炎と胃がんはほとんどの場合全く違う場所から発生してくるのです。これはピロリ菌感染ががんの危険因子であるということは問題ないとして、鳥肌胃炎がはたして原因といってよいのか甚だ疑問の部分です。恐らく、研究をされている先生方の正確な言い分としては、「鳥肌胃炎を起こしている胃はがんの発生率が高いが、鳥肌胃炎粘膜自体が胃がんになりやすいわけではない」ということなのではないかと思います。この点については、医師側も誤解をされている方が多数おられるのではないでしょうか。

 それでは鳥肌胃炎に出くわしたときにどのように治療すべきなのでしょうか。これも私見の域を出ませんが、私はピロリ菌感染と鳥肌胃炎には密接な関係があり、ピロリ菌感染は胃がんの危険因子の一つなのですから、きちんと除菌することはよいことだと思います。現状では、胃潰瘍・十二指腸潰瘍が現在あるか、過去になったことがある方しか保険適応はありませんので、単なる胃炎のみの方の場合には全額自費治療になってしまう点が問題ですが、金額的には1万円弱程度ですので経済的余裕があれば除菌をお勧めします。
 次の問題として、掲示板にも多く質問が寄せられていますが、ピロリ菌の除菌が成功した後に鳥肌胃炎が治らないようなケースでは今後、胃がんの発症リスクは高くなるのでしょうか。この点に私は今後注目して行きたいと思っています。もし鳥肌胃炎が原因であるのなら、ピロリ菌がいなくなっても鳥肌胃炎が残っていれば胃がんが発生することになります。鳥肌胃炎がピロリ菌感染による一つの胃炎形態に過ぎないのであれば、ピロリ菌が除菌されていれば鳥肌胃炎が残存しているかどうかは気にする必要のないものということになります。今後、この点についてはデータ出てくるものと思われますが、私は後者である可能性が高いと考えています。

 治療に関してさらに付け加えますが、胃の膨満感や軽度の痛みやムカつきなどが全てピロリ菌感染が原因であるかのごとき治療が横行しています。もちろんピロリ菌感染が胃の運動能を低下させることは存じていますが、除菌をしても症状が改善しない方は当クリニック全体でも約半数近くおり、この点についても掲示板での質問が大変多い部分です。挙句の果てに除菌できても症状がよくならないのは鳥肌胃炎があるためなどという説明を受けている方もおられます。もともと胃の症状には潰瘍やがん、胃炎といった粘膜傷害が起こって出現するものと、胃の動きが悪くて出現するものがあります。我々開業医が日常診療で多く経験するのは胃の動きが悪くて起こる場合です。胃が痛くて内視鏡をしたら、胃に数mmのただれがあり、それが原因で胃が痛くなったという説明を受けている人が多数いらっしゃいます。数mmのただれで胃が痛くなるなんて私はナンセンスだと思います。検診で無症状の方に胃カメラをしても数mmのただれは普通によく見かけます。その人たちは全くの無症状です。胃の動きを改善していくような治療を行っていけば、かなりの確率でピロリ菌が陽性でも症状は軽快するものです。胃の症状を胃粘膜傷害のみから説明する病院に通っていては何年通っていても症状はよくならないでしょう。

 以上、長々と今回は真面目な話を致しました。実際に悩んでおられる方にとっては長くても目を通して頂けるものと信じて、自分としては核心に迫るものとして書きました。悩んでおられる方々の多少なりとも解消につながれば幸いです。

幸田クリニック  

Posted by こうだ at 02:59TrackBack(0)鳥肌胃炎

2008年10月10日

AED導入

 幸田クリニックではAEDを導入しました。AEDとはAutomated External Defibrillatorの略で日本語では自動体外式除細動器といいます。心臓がけいれんを起こして、機能しなくなってしまった場合(心室細動)に電気ショックを加えて正常なリズムに戻すためのものです。心室細動といのは、心臓に持病のある人はもちろんのこと、健常な方でも運動中などに突然起こることがあります。心臓が血液を送り出すことが出来なくなってしまいますので、命に関わる状況となります。
心室細動になった場合の唯一といってもよい効果的治療法が電気的除細動なのです。

 2004年7月に厚生労働省から、非医療従事者である一般市民が救命の現場でAEDを使用することは問題ないという判断が下され、色々な公共施設にも設置されいざというときに現場に居合わせた市民が使用できるようになりました。具合の悪い患者様が待ち時間の最中に心室細動になってしまうかもしれませんし、当院の近くで突然心室細動になって具合が悪くなり倒れる方がいるかもしれません。そんなときのために当院でも導入をすることに致しました。

 器械自体はとても小型で持ち運びが可能です。しかも使い方はとてもシンプル。AEDについてもっと詳しく知りたい方は日本光電のAEDサイトにどうぞ。
 今後も幸田クリニックでは皆様に信頼される医院を目指してまいります。






  

Posted by こうだ at 15:03TrackBack(0)医療

2008年10月08日

10月7日は消防点検日


 10月7日は年に一度の消防点検がありました。午前中に連絡があって昼休みに来るという抜き打ち的なものでした。こういったところも輸入米騒動でおざなりな形式的点検をしていたという反省が生きているのでしょうか? 昼は往診等があり、肝心の私は点検には同席でませんでしたが、その分スタッフがきちんと対応してくれました。本当に心強いスタッフで日々頼りにしております。
 芳川消防署の方が3名ほど来院され、火災報知器、避難誘導灯、消火器といった設備の点検チェックを行って頂きました。消防車も実際に来て、入口から入れるか駐車スペースが確保できるかなどを確認された模様です。普段から火災報知機が鳴るようなことはないので、実際に有事の際にきちんと作動するのかはやはり心配なものです。昨今のビル火災でスプリンクラーが作動しなかったであるとか、避難誘導灯が点いていなかったといったような話を聞く度にそのようなことがあってはならないと思いますが、実際に作動しているところをみたことはないのできちんとチェックして頂けるのは嬉しい限りです。毎年行って頂いていますが、ちなみに本年の点検でも院内の設備には幸い問題はなかったようです。
 点検後にはスタッフが消防車の設備や実際に火事の際に着用するスーツなどを着用させて頂き、非常に有意義なものでした。とある報道によると、昨今は消防士を志望する方が減って人手の確保が大変なようです。一方で女性の志願者は予想よりも多くなっているのだとか.. 消防士の方々も一旦有事が起これば昼も夜もなく激務であり、本当に頭が下がる思いです。日頃も日勤や夜勤があり、日々鍛えているとはいえ体調も崩しやすいのではないでしょうか。女性が今のところ火災の現場に出ることは数少ないようですが、日頃からの消防の点検や防災訓練などの場面では女性隊員がもっと活躍する場があってもよいように思うのは私だけでしょうか? 今後、この分野で女性として活躍する方が増えていくことは大変良いことであり、是非注目していきたいと思っています。

幸田クリニック


  

Posted by こうだ at 08:28TrackBack(0)日記

2008年10月06日

株式会社リズムでの講話(頚動脈エコーのすすめ)


 10月より株式会社リズムさんの産業医を仰せつかることになりました。社員の皆様、そのご家族の皆様よろしくお願い致します。株式会社リズム内の工場を見学させていただきましたが、その技術力の高さや企業としてのモチベーションの高さには感銘した次第です。

 そんなこともあり、10月3日の14時から株式会社リズム内で顔見せを兼ねた講和をさせて頂きました。メタボの方も多いということで、メタボによって起こる可能性のある動脈硬化についてお話ししました。高血圧でも脂質異常症でも、よく数値のみを気にされている方が多いですが、肝心なことは動脈硬化を予防することです。数値がよくても動脈硬化が進んで、将来的に脳卒中や心筋梗塞を起こすようなことがあっては、折角病院に通っている意味がありません。

 高血圧、脂質異常症、糖尿病をはじめ、メタボの方も是非、
 動脈硬化のチェックのため頚動脈エコーを行うことをお勧めいたします

 首のところに超音波の端子をあててチェックするだけの簡単な検査です。注射をしたり痛みを伴うことはありません。食事も普通に食べてきてもらって結構です。
 検査を行うことで、ご自身の動脈硬化の程度がわかります。数値は気にしているけれども、動脈硬化の程度を見たことはないという方は是非お勧めいたします。当院では特に予約は必要ありません。検査時間は10分前後です。検査自体の費用は3割負担の方で1200円程度です(診察料や処方料は別途)。

幸田クリニック
  

Posted by こうだ at 13:44TrackBack(0)講演会
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プロフィール
こうだ
2006年12月より浜松市南区で幸田クリニックを開業。 浜松生まれの浜松育ち。 専門は消化器内視鏡。病院勤め(東京)の時には、胃がん、大腸がんに対する内視鏡手術(切開剥離法)を専門に行う。 現在、幸田クリニックは、浜松では数少ない楽で痛みの少ない大腸内視鏡検査を行うクリニックとして数多くの問い合わせがある。 一方で漢方治療も行いながら、東洋医学と西洋医学の融合した医療を独自に目指している。